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出展元

http://newsphere.jp/world-report/20141210-4/

◆日本車天国インドネシア
インドネシアの自動車市場は、日系メーカーの独断場といってもいい様子だ。シェア全体の実に9割が日本車である。ここまで勢力図がはっきりしている市場も、他にそうはないはずだ。なぜ、インドネシアでは日本車が強いのか。

インドネシア共和国2代目大統領はハジ・ムハンマド・スハルトという人物である。スハルトは軍人出身で、いわゆる開発独裁型の指導者だった。国内の共産主義勢力やその疑いのある者及び集落、またアチェや東ティモールの独立運動を武力で鎮圧しようとした典型的な武闘派である。彼の指示により行われた虐殺や拷問は、国際社会にも広く知られている。

だが同時に、外国資本の受け入れに関しては非常に開放的でもあった。スハルトは国際的にもかなり早い段階で日本車の可能性に注目し、懸命なロビー活動により日系モーター企業をジャワ島へ呼び込んだ。この政策は隣国マレーシアにも影響を与えたという。

ところでインドネシアとマレーシアのモーター政策の相違点といえば、日系企業呼び込みを自国独自の自動車メーカー育成につなげたか否かということだ。マハティール時代のマレーシアは三菱自動車の支援を得て、国産メーカー『プロトン』を立ち上げた。一方のインドネシアは日系企業ではなく、韓国の起亜自動車と協力して『ティモール』を創設する。だがこのティモール社とその生産車はアジア経済危機の惨禍を真正面から被り、結果的にたった4年で経営破綻する。

それ以来、純国産車がライン生産されていないというわけではないが、なかなかシェアを伸ばせずにいる。インドネシア人の心の中に国産車へのこだわりが薄くなった、というのも一つの要因だ。現地インターネットメディアのリパブリカ・オンラインの9月19日付記事には、国産車の人気のなさに苦言を呈するジョコ大統領(当時は就任前)について書かれている。

「ジョコ・ウィドド氏はジャカルタ万博会場で行われた国際モーターショーについて、インドネシアの国産車『エセムカ』が参加していなかったことに悔やむコメントを残した。
『我々は独立してすでに何年経つ? 航空機の生産はできて、自動車の生産はできないという理屈なのか』」

実はインドネシアには『インドネシアン・エアロスペース』という航空機メーカーがあり、スペインのCASA社(現エアバスグループ)と共同開発した軍用輸送機が好調なセールスを発揮している。にもかかわらず、なぜ国産車は作れないのか……というジョコ大統領の言葉である。

◆国産車より日本のエコカー
だが上記のジョコ大統領の発言は、一種の自己矛盾を含んでいる。

話を燃料補助金に戻そう。各国の政策がどうあろうと、原油価格は生き物である。相場が下げ止まりし続けるとは限らない。もし2008年のような燃料コスト高騰時代が再びやって来たら、プレミアムガソリンもただでは済まない。

だからこそ政府も国民も、低燃費でコストパフォーマンスの高いエコカーを求めている。それには日本からの資本、技術が不可欠だ。日系メーカーとの関係を抜きに性能の良いエコカーを生産できるとは、誰も考えていない。

現地メディアのリプタンシックスは、上記政策執行直後にトヨタの環境車を取り上げ、記事にしている。

「トヨタは環境に配慮した水素電池車種をついに販売する。『ミライ』と名付けられたこの最新の自動車は、9月にジャカルタで開催された国際モーターショーでも披露されている」

ジャカルタでは昨年辺りから排気ガス削減が叫ばれてきた。環境車補助金政策もあり、同地で毎年開催される国際モーターショーは「エコカーの戦場」と呼ぶにふさわしい様子になっている。そのような理由で、インドネシアのモーターウォッチャーは純国産車よりも、次世代動力車の発売計画を追いかけるのに必死だ。新し物好きのインドネシア人は、日本のエコカーに大きな憧れを抱いているのである。

◆東部からの需要
次に最新型ではない車種の販売、中古車市場を見てみよう。これも実は、新車市場と同じように日系メーカーにとっては明るい兆しがあるようだ。インターネットニュースメディアのラヤックポストは、インドネシアの消費者が依然日本の中古車を求めている現状を書いている。

「燃料補助金削減の影響は多方面に及んでいるが、それでも中古車市場には長期的に見てさほど悪影響はないようだ。自動車はもはや贅沢品ではなく、人々にとっては足と化している。そのため、燃料費の上昇にかかわらず中古車販売は高止まりしている。
(中略)
ホンダの自動車は今日に至るまで注目され続けている。ホンダ車は耐久性に優れ、大きな故障は稀だ。特にジャズのような車種の中古車は消費者の目を最も集めている」

インドネシアはジャカルタやスラバヤに行けば高層ビルが立ち並んでいるが、フローレス島やマルク諸島、パプアなどの東部地方はまだまだインフラ整備率が低い。例えばフローレス島は住民の8割がカトリック信者という地域だが、現地の教区の司祭が隣町までミサを執り行うために数時間の山道を移動するという光景は普通である。フローレス島は高低差の激しい火山島だ。そんな所にカトリックを布教しに行った16世紀の宣教師はまさに超人だが、さすがに現代の神父は車を使う。彼らの足は、日本の中古車だ。

日本製の中古車はSUV車でも軽トラックでも、とにかく耐久性に優れているというのが現地の評判である。逆に言えば、これがないとフローレス島ではカトリック教会の福音宣教すらもままならないのだ。

こうした事情から、日系モーター企業の持つポテンシャルは燃料高騰に対しても滅多に負けることはないと現地では認識されている。

 

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